平清盛の目指した貿易革命

ネクストビジョン ありまです。
今年のNHK大河ドラマは松山ケンイチさんが主演する「平清盛」ですね。早速、先日放送された第1回「ふたりの父」を見ました。なかなか迫力あって面白かったです。

広島では厳島神社や音戸の瀬戸など、清盛ゆかりの地が多いですから、広島の各地で観光の効果・経済効果に期待されていますね。
今回は今年の広島のヒーロー@平清盛について語ります。

私は平清盛が2人の歴史上の人物に似ているいるなぁと思います。
1人目は「坂本龍馬」です。いち早く海外に眼を向ける先進性、旧弊にとらわれない合理性、抜群の行動力、そして何より海と船が大好き。そして、二人とも経済にかなり強い・・・。

平清盛の功績は、何と言ってもそれまでの藤原氏(貴族)が中心の政治から武士が中心の政治へと変化させたことです。
その力の背景には、清盛の父・忠盛が始めた日宋貿易による巨万の資金力があったようです。貴族にはない圧倒的な武力に経済力が加われば、貴族などひとたまりもありません。

こうして清盛は出世を重ねついには太政大臣という当時の最高権力者になります。そして当時の貿易革命といえる事業に取り組みます。

当時の貿易船である宋船は船底が日本の船より一段と深く、日本で宋船を受け入れられる港は、博多港しかなかったようです。
さらに博多では輸出も輸入もすべて宋商人が仕切っていたようです。これでは日本側に不利な条件も飲まなければならなくなります。

そこで、清盛は船底が深い「宋船」が、日本最大の消費地である畿内(きだい)にまで安全に乗り入れられるようにするため、「瀬戸内海航路開発事業」に取り組みます。

大輪田泊(おおわだのとまり※現在の神戸港)という日本初の人工港を整備し、人工島の造営など、先進的な技術を導入し、「博多~神戸」間の瀬戸内海航路を積極的に開発していきます。こうした事業の過程で厳島神社の造営や音戸の瀬戸が生まれたわけです。

つまり、清盛は、貿易の中心地を博多から神戸に移すことで、貿易実務を宋から日本に移す一大革命を為そうとしていたのです。「瀬戸内海航路」の確立によって「”真に自由な”日宋貿易の確立」を目指していたのです。当時の大国である宋に対して貿易革命と言える事業だったのです。

神戸港に宋船が泊まるようになったのが1170年。その後、清盛はみずから宋船を購入し、厳島神社の参拝や源平合戦の際に使った・・・という記録があるそうです。本当はこの船で、日本主導の貿易をさらにアジア全域で進めようと計画していたのではないでしょうか。

平家の滅亡後、源氏政権は日本で宋船を作ろうとしますが、これは船が浮かばずに失敗しています。その後、室町時代には「日明貿易」が始まりますがこれは朝貢、つまり明の皇帝に贈物をする形で行われる貿易でした。民間商人も恩恵を被りましたが、必ずしも民間に開かれた自由な貿易形態ではありませんでした。結局、中世以降、日本が開かれた自由な貿易へとシフトすることはなかったのです。

もし、平家政権がもっと長く続いていれば、現代—戦後・昭和の時代から約800年も前に、貿易立国として広く海外に目を向けた国家が出来上がっていた・・・かもしれないですね。

「博多に来た宋商人から唐物を買う」・・・というこれまで当たり前だと思っていたシステムを打破し、まったく新しい貿易の仕組みを創りだそうと考えた平清盛。

決められたルールの上で、プレイヤーとして巧みに動く経営者もたしかに優秀ですが、自ら市場をつくり新しいルールを生み出す経営者にはかないません。清盛が経営者として卓越している点、それはまさに、この構想力の大きさなのです。

これからNHKがどのような清盛像を描くのか楽しみですが、事前にこうした清盛の業績を整理しておくとより一層ドラマが楽しめるかもしれませんね。

さきほど私は平清盛が2人の歴史上の人物に似ているいると思うと述べましたが、その2人目は次回のお楽しみにしておきます。

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この記事を書いた人

有馬 猛夫(ありま たけお)
ネクストビジョングループ 代表 IT系の専門学校で11年間教壇に立った経験を生かし、1999年ネクストビジョン設立。広島発ITベンチャー企業として製品開発・サービスの提供を行う。2006年広島市企業診断優良企業賞受賞。2008年マイクロソフト社と広島市によるITベンチャー支援企業として中国地方で初の選定企業となる。
・株式会社ネクストビジョン 代表取締役社長
・株式会社マイクロギア 代表取締役会長
・アナリックス株式会社 代表取締役会長
・一般社団法人ヘルスケアマネジメント協会 理事

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