米谷 美久氏から学ぶモノづくりの原点

ネクストビジョン ありまです。

「我々は単にカメラを作っているわけじゃない。カメラを通じて人々の大切な思い出を残すお手伝いをしているんだ」
これはオリンパスのカメラ技術者の米谷美久氏の言葉です。

80年代初頭、高校生2年であった私は、自分の進路についてとても悩んでいました。

そんな折、学研のCAPAというカメラ雑誌を眺めていたらOLYMPUSの技術者である「米谷 美久」氏のインタビュー記事が載っていて、それにすごく感動したのです。

これだ!米谷さんのような技術者になろう!お客様目線で、世界にない素晴らしいカメラを作るそんな仕事をしてみたい。そう思いました。

結果的にはIT分野の人生を歩んで現在に至っていますが、私の人生の選択に大きく影響があった人物であることは間違いないのです。

ここでざっくりとその米谷氏のご紹介をしましょう。

米谷 美久(まいたに よしひさ)

1933年1月8日香川県観音寺市生まれ。少年の頃からカメラに親しみ、写真を撮ることが好きだった。大学では機械工学を学ぶ。
1956(昭和31)年にオリンパス光学工業株式会社(現在のオリンパス株式会社)に入社。カメラの設計に従事し、「オリンパスペン」(1959年)、「オリンパスペンF」(1963年)、「オリンパスOM-1」(1973年)、「オリンパスXA」(1979年)など、写真業界に一大ブームを巻き起こし、世界のカメラ史に名を残す数々のカメラ開発に携わってきた。2009年7月没。

オリンパスのHP https://www.olympus.co.jp より

革新的なハーフ銀塩カメラの名機・「PEN」シリーズをこの世に生み出し、そして「OM-SYSTEM」の開発、「XA」のデザイン的ヒット、そして現在のデジタルのOM-Dシリーズへと受け継がれるオリンパス一眼レフの源流を開発した米谷氏。一人の技術者がカメラ開発において最大限、何ができるのかを示して見せた大人物です。

私は今のオリンパスがあるのも、すべては米谷氏のカメラに対する情熱と技術者としての探求心がもたらしたに他ならないと考えています。

米谷氏が主に手掛けたPENシリーズ、OM-SYSTEM、XAシリーズはどれもユニークで他社にないモノでした。

しかもそれが現在の常識のカタチになっているのです。

PENの機構・メカニズムはその後あのフジの使い切りカメラ「写るんです」に引き継がれた。

OM-1(M-1)は、それまでの一眼レフの「大きい・重い・うるさい」から「小さく・軽く・静か」な一眼カメラが当たり前のようになった。

XAはカプセル式というデザインと写りの性能を両立させ、はじめてキャップのないカメラ。ポケットカメラの常識を変えた。

米谷氏のインタビューに「今あるものは作る必要はない。ないから作るのだ」との言葉がありました。

技術者としてすべきことは「新しい何かを作りだすこと」。技術者は技術者でも開発者でなければならない。開発者とは世の中にないモノを作る仕事なのだ。

今なお心揺さぶる言葉です。私はそこにシンパシーを感じたのです。

わたしは憧れの米谷さんのようなカメラを作るエンジニアには結局なれませんでしたが、ソフトウェア開発の分野でモノづくりに携わっています。「今あるものは作る必要はない。ないから作るのだ」との言葉のとおり、新しく世の中を変えるイノベーションを起こせるようなシステムづくりを進めていくためには、米谷さんのような技術者としての姿勢を持ち続けなければならないと考えています。

せっかくなので、生前の米谷さんへのインタビュー動画をご紹介します。こちらにも上記のようなことを熱く語っておられます。

PEN編(8:20)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm12720798

OM編(3:39)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm12721188

最後にネットで次のポスターの画像をみつけたのでご紹介します。

当時の商品ポスター広告で、技術者が一緒に写っているなんというのは珍しいものです。しかも海外向けのマーケティング媒体です。それだけに米谷氏のことは世界に認められていたということですね。

この素敵なデザインの広告には、米谷氏のメッセージが次のように記されています。

 I wanted to design a camera that takes photographs no other camera can.
 (どんなカメラにも真似することのできない写真が撮れるカメラを作りたかった)
 I studied hands from all over the world, so the OM-1 would fit comfortably in your hands.
 (世界中のひとの手を調べつくすことで、あなたの手のひらに心地よくフィットするOM-1が完成した)

冒頭でご紹介した言葉、「我々は単にカメラを作っているわけじゃない。カメラを通じて人々の大切な思い出を残すお手伝いをしているんだ」これをITに置き換えて、

「我々は単にプログラムを作っているわけじゃない。ITを通じて人々の暮らしをもっとよくするお手伝いをしているんだ」

と、心得てこれからのITによるイノベーション活動をしていきたい、米谷さんから教わった開発者としての姿勢は常に忘れずに活かしていきたい、そう考えているところです。

<参考>
オリンパス 米谷美久が語る開発秘話 https://www.olympus.co.jp/brand/museum/lecture/vol1/

Wikipedia 米谷美久 https://ja.wikipedia.org/wiki/米谷美久/

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この記事を書いた人

有馬 猛夫(ありま たけお)
ネクストビジョングループ 代表 IT系の専門学校で11年間教壇に立った経験を生かし、1999年ネクストビジョン設立。広島発ITベンチャー企業として製品開発・サービスの提供を行う。2006年広島市企業診断優良企業賞受賞。2008年マイクロソフト社と広島市によるITベンチャー支援企業として中国地方で初の選定企業となる。
・株式会社ネクストビジョン 代表取締役社長
・株式会社マイクロギア 代表取締役会長
・アナリックス株式会社 代表取締役会長
・一般社団法人ヘルスケアマネジメント協会 理事

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