私は、経営者として、自分の会社を常にいい会社にしたいと考えてきました。そして社員のみなさんがモチベーションを高く持ち続けてもらうためにどうあるべきか。常に悩んで考え続けてきた自負があります。
さて、今回は、経営に携わる方々にとって最も基本的で素朴な問いである、「働く意欲をどうやって上げればよいか」について私なりに学んだことを解説します。
アメリカの心理学者でもあり、経営学者でもあったダグラス・マクレガーは、人間のタイプやモチベーションの抱き方について、対照的な二つの理論を提唱しました。それが「X理論」と「Y理論」でした。
私が今回お伝えしたいことの前提として、まずはこの「X理論」と「Y理論」について解説したいと思います。
■X理論:アメとムチのマネジメント
ダグラス・マクレガーは「人はできるかぎり仕事はしたくないものだ。懲罰と報酬こそが目標達成のために最も必要なことであり、人々は命令される方が楽なのだ」と考えました。
つまり、「いい仕事をすれば給料が上がる」などの報酬こそがモチベーションの源泉であり、また、働かない者には、減給したり、叱ったり、厳しく監督する必要がある、と考える考え方です。
これは人間は「生来怠け者なのだ」と捉えた「性悪説」の考え方に基づくものですね。
■Y理論:信頼して任せるマネジメント
X理論とは対照的なのがY理論。
こちらは、「条件さえ整えば、部下は、周りから言われなくても自発的に動く。人は基本的に仕事を楽しむ。」という考え方です。
つまり裁量権をできるだけ多く与え、社員を信じ、目標と自由と環境を与えることで成果を期待する手法です。
「部下は必要なだけの創造力を持っている」「仕事をすること自体の楽しさが、モチベーションの源泉である」という見方でもあります。
つまり「性善説」の考えに基づいた理論といえます。
■X理論とY理論、正しいのはどっち?
結論をいえば、「どっちも正しい」し、「どちらも間違い」なのです。
「X理論(性悪説)」的な見方で部下を見る上司の下では、その上司の見方どおりの、「言われないと動かない部下」「報酬と罰則がないと頑張らない部下」「自主性に欠ける部下」が育ちます。
一方、「Y理論(性善説)」的な見方で部下を見る上司の下では、その上司の見方どおりの、「自主性・創造性を発揮する部下」「仕事を楽しむ部下」が育つことになるのです。
つまり、給与や評価制度など社内体制が「X理論」の体制の会社には「X理論」的な社員にとっては居心地がいい。けれど「自主性・創造性を発揮する社員」「仕事を楽しむ社員」には居心地悪いのです。
逆に社内体制が「Y理論」の体制の会社には「Y理論」的な社員にとっては居心地がいい。けれどやはり「言われないと動かない部下」「報酬と罰則がないと頑張らない部下」「自主性に欠ける部下」にとっては居心地悪いことになるのです。
「マズローの欲求段階説」というものがあります。
これはアメリカの心理学者アブラハム・マズローが、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化したものです。
<低次元> 第1段階 生理的欲求
↑ 第2段階 安全や安定の欲求
第3段階 社会的欲求 / 所属と愛の欲求
↓ 第4段階 承認(尊重)の欲求
<高次元> 第5段階 自己実現の欲求
この詳細はまたいずれ記事にすることとして、ともかく、マクレガーはこの「マズローの欲求段階説」を基にX理論やY理論を考えたといわれています。
X理論では「生理的欲求」や「安全や安定の欲求」など、低次欲求を多く持つ人にあてはまります。
Y理論では「他人から承認されたい」「自分をもっと高めていきたい」などの高次欲求を多く持つ人にあてはまるのです。
つまり、「マズローの欲求段階説」のどの段階の社員が多いかによってモチベーションの管理方法は変えた方がいいということです。
または社員のレベルに合わせてX理論かY理論を変えないいけません。
■第3の行動モデル「Z理論」
X理論とY理論を提唱したダグラス・マクレガーは、そのいずれの手法でも欠陥があるとして、誰もがモチベーションアップにつながる第3の行動モデルがあるのではないかと研究を続けました。ところが失意のうちに病気で世を去ります。
そしてその後、日系3世でUCLA教授を務めたウィリアム・オオウチが第3の行動モデルとして「Z理論」を提唱しました。
ウィリアム・オオウチは日本の特徴的経営システムに着目しました。
そして、日本経営はX理論と、Y理論の両方の良いところを集めたものと気づいたのです。
それは、「終身雇用」であったり「年功序列」であったり、近年の日本であまり良いこととされていない内容です。
それを採用していたのがあのIBMであり、ヒューレット・パッカードであり、イーストマン・コダックであり、実は日本型と言いつつ、日本だけで行っていたわけではなかったのですね。
■働く意欲をどうやって上げればよいのか
さあ、ここまでが前置きでした。
本題は「働く意欲をどうやって上げればよいか」についてです。
「X理論」では報酬と懲罰で管理、つまり「報酬のために働く」
「Y理論」では自由と信頼で管理、つまり「自己実現のために働く」
X理論もY理論も人により当てはまらない場合があります。
「Z理論」はいいとこどり。では何のために働くのか?
それは「人に対する全面的な関わり(人間関係の形成)のために働く」
というのが答えです。
自分が働くことで喜んでくれるくれる人がいる。必要としてくれている人がいる。「ありがとう」と返してくれる人がいる。
それがモチベーションにつながるという考え方がZ理論なのです。
この「誰かのために働く」というモチベーションは、ダグラス・マクレガーが何年も研究して見つけられなかった、万人に共通のモチベーションアップの行動モデルだったのです。
常に、自分を必要としている人がいる。ありがとうという言葉がある。そう感じられる職場こそが、実は最高のモチベーションアップの会社なのですね。
当社、ネクストビジョンもZ理論を大切にして高いモチベーションを維持できる会社を目指しています!
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